BEYOND HATE 5th album「SZOK West Side Storieis」

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「イナたい+タフガイ=イナタフガイ」

遠州浜松ハードコアの雄、BEYOND HATEの8年ぶり5枚目となるアルバム『SZOK West Side Stories』は文字通り、BH8がこれまで感じて過ごしてきた静岡西部の物語。

その都度スタイルを変化させながらハードコアとパンクの広大な海の中を自由に泳いできたBH8だが、今作は自らを半ば揶揄しながら「イナたい+タフガイ=イナタフガイ」とも称しており、ハードコアはもちろんヒップホップやグラフティ、特に90’sアメリカのウェッサイ/イーストコーストさらにはサウスやチカーノなど、様々な地域のアンダーグラウンドサブカルチャーに対する憧れや愛情が2024年のここにきて大爆発。鼻息荒く、激しく鋭くグルーヴィーでストンピンな曲調は、まるで跳ね上がるローライダーのインパラがモッシュピットに突っ込んでいき、それを見て様々なジャンルの不良たちが喝采の声を浴びせ祝福しているかのようだ。

さらにいえばそういったある種のワナビー的な価値観と、ドメスティックな日本解釈でのバンド/ヤンキー/ギャング文化、浜松のローカルルールや価値観が荒々しく交配することで奇跡的なインブリードに成功しており、さびれた郊外の国道にフランチャイズのチェーン店、ひと気もまばらな駅前のロータリーやコンビニ、好きモノしか集まらないライブハウスにクラブ、そんな愛憎入り交じる街に不思議と馴染む、究極のラブソングスといえるだろう。


 

全世界のロマンチストな不良に捧げる、すべてにおいて抜かりのないマイルストーン

アルバムはまず静岡が誇るヒップホップレジェンド「Beatmaster」からKO-1によるウェッサイ調の極太ビート、DJ FUMIXのスキルフルなスクラッチにて幕を開ける。2曲目ではGridironやBayway NJといった現行のハードコアバンドにも通じる、ザックザクのビートダウンシットの上で韻を踏みまくるVo.TOXONのシャウト、そしてUMB静岡代表の過去もあるラッパーM.O.J.I.をフィーチャリング。矢継ぎ早に繰り出される豪快なサウンドと地元HIPHOP勢とのコラボレーションは、決して浮つくことなく硬派な感触で仕上がっており、これが今作における全体の”ノリ”を理解する上で大きなキーポイントの一つといっても過言ではない。

3曲目以降も前述したハードコア/ヒップホップのある意味では東西ドンパチ、BH8内抗争とでもいうべきサウンドが繰り広げられており、切れ味鋭いミュート&飛び弦のフレーズをセンスよく織り交ぜながら重心低くパワフルに押しまくる、悪羅悪羅THUGラッピンコアの応酬はFury Of Fiveなどを彷彿とさせ、それがMVで先行公開された5曲目の「Take a look in the mirror」までひたすらに高揚していく。そこで再び登場するDJ FUMIXによるスクラッチでの声ネタにはニヤリとさせられること間違いないだろう。6曲目では3rdアルバム以降で見せた、Wisdom In Chainsなどを感じさせるタフなSkins/Oi的アプローチもMixさせつつ、ラストの7曲目では1stからのキャリア集大成とでもいうような、メタリックなリフを壮絶に畳み掛けるひと際スケールの大きなナンバーでアルバムを締めくくる。

そんな今作の世界観を過不足なく忠実に再現した凄まじいジャケットデザインは、90年代のNYをリアルタイムで経験するなど、説得力という点で中々並ぶ者のいない京都のKone氏を起用。裏ジャケは地元のグラフティクルー”MUC”よりJOKEとWONCによるアートワーク。中ジャケや歌詞カード、CD盤面においても今作の世界観と完璧にマッチアップ。レーベルは盟友KiMのメンバーが運営するFRONT OF UNION。全世界のロマンチストな不良に捧げる、すべてにおいて抜かりのないマイルストーンがここに完成した。

Reviewed by Erolin(Burning Sign, Nodaysoff, SMDcrew, Back Yard Zine&Records)


 

BEYOND HATE

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