IKKI NOT DEAD vs FRONT OF UNION レーベル代表サシ呑み対談後編
HATANO氏(HAWAIIAN6, IKKI NOT DEAD), 江頭(KiM, FRONT OF UNION)による、堺ミーティング前日の夜に行われたレーベル代表同士のサシ呑み対談後編。きたる8/18に京都MUSEで開催されるvs企画に向け、前編に引き続いて他では語られないようなディープで濃厚な内容となった。現在に至るまでの各レーベル・バンドの姿勢やスタンス、それらが御互いのリスペクトを生み自然と交わり対峙するようになった背景とは。非常に興味深い対談の後編をどうぞ。
江頭(以下 : 江) :最近はもう、ライブでホームラン狙いのフルスイングしかしなくなりましたね。三振は見たくないって言うのであれば、意味が分からないお前が悪い。三振かホームランしかないのが、この世界観やってね。昔はアベレージとか平均点みたいなものを気にしてたんですけど、今はもうフルスイングしかしないから、当たったら飛ぶけど当たらん時はしゃーないぞってね。エコーズって二塁打を狙ってるバンド出ないでしょ、全員がホームラン狙いで。他のフェスと違う空気感ってのは、多分そこだと思うんですよね。
HATANO(以下: H):上手な人は、たくさんいるじゃん。演奏者としても、歌い手さんとしても。でも最初から二塁打を打とうとしてる人はやっぱ見に行きたくないんだよね。予定通りの二塁打を見て、今日もいい二塁打でしたねって言いたくない。だったらとてつもねぇ三振するか、見えなくなるようなホームランを打とうとしてる様を見たい。俺たちもフェスとかに出始めた頃、全然いいライブはできなかったんだけど、打てなくてもその気持ちだけはあった。まぁ今も昔も凄い三振してるけどさ(笑)今は2万人の前でやる大変さも本当にわかるんだよ。でも大袈裟な言い方かもしれないけど、生きるか死ぬかってのをステージでやってる人と、やっぱり一緒にやりたいんだよね。
江:昔に1回京都の大きいフェスで言ったわ。一個別枠でステージ作らしてくれやって。
H:出演者の発表しなくてもチケットが売り切れるようなイベントとかだったら、名もない地元の若手とか2バンドくらい出せば良いのにって思うんだよね。名もない若手かもしれないけど、ライブがスゲェんだってやつをピックアップしてあげたら、地元のバンドマンのヤル気ももっと出るんじゃないかな。そうすりゃそのイベントの見え方も、少しは違って見えるんじゃねーかなって。金もかかってて色んな大人の事情ってのもわかるんだけども・・・そこに少しでもゆとりがあるんなら『人気のバロメーター=フェス』みたいな物差しから、一歩外れた見せ方させてもいいんじゃないかなって思うよ。自分たちが好きなもの、っていう。まぁでもその割には毎年エコーズやってて、支払い時は胃が痛くなるけどね・・・
一同:笑
江:そうっすね!僕もKBSの武骨夜は痛くなりましたもん。
H:昔、エコーズになる前の1997ってイベントやったときに、精算書の一番最後が赤い字で書いてあったときは震えが止まらなかったよ(笑)それまで黒い字だったのが、最後だけ赤い字だったからね。でもそれが、たとえ最後に書かれた字が赤だったとしても、辞める理由にはならないからね。赤だったら赤で、知恵出し合ってやろうよって。黒だったら黒で、また何か新しい事ができるだろうって欲が出るしね。それがイベントの良さだって思うし。ところで、KBSのときはどうだったの?
江:KBSのときはね、最後は黒だったんっすよ。
一同:笑
江:でもKBSは、同じステージを2個作ったのがヤバかったすね。ただあの出演者の並びで、ステージの大きさじゃないとはいえ、変な先入観を持たれたくなかったんでね。どっちのステージも、ただの順番で見てほしかったんで。
H:メインと呼ばれることが嫌なんだよね。俺たちも1回、2日続けてエコーズやったときに初日とファイナルって呼ばれたくなくて、ブッキングとかもスゲェ悩んだもん。毎年出てもらってるKOさん(SLANG)にも話して、2日とも演ってもらえないですかって。
江:あのときは2日ともSLANGがバーステージのトリやったじゃないですか、あれは燃えましたね。
H:どうやってもあの2日間は2DAYSじゃなくて、1DAYを2日間やるっていう気持ちは譲れなかったのよね。
江:僕はエコーズのときのSLANG、解き放ってて好きなんすよ。それこそ他のバンドとも、同じやしフルスイングなんで。
H:あそこのバーステージって、ほんとにスーパーカオスだよね。何て言っていいか上手く言えないんだけど、自分たちが憧れていたものの、集大成があそこにあるって感じで。1バンドマンとしてバンドを始めた人間なら、バーステージがどれほど重いものなのかって誰でもわかることだもん。毎年、バーステージ最後のSLANGを見るとき、全部は見れないんだけど物凄い緊張感があるんだよね。1バンド目からのスゴい積み重ねがあってね。
江:全バンドが優勝狙ってるもんやから、エグいハードルの上がり方してますもんね。
H:やっぱり自分が立てるイベントはさぁ、自分がお客として行ったときに面白いって思えるものじゃないとやりたくないじゃない。だからあのバーステージだけでも、充分すぎるくらい面白いもんね。
江:毎回ドラマがありますもんね。2日間の初日の方でKOさんが飲み過ぎてて、壬生狼も一緒ってこともあってね。壬生狼は出番終わってたんで、飲み方の勢いが凄いんすよ。それにKOさんが引かないからガンガン行くんすよね。久しぶりに俺、後輩感出ましたもん。『KOさん、本番5分前です、立ちましょ』って(笑)
H:一緒にライブをやる前からの、それこそ見に行ってるときからの、あの緊張感が最高だよね。
江:それでも声掛けたときスグには、KOさん立たなかったんすよね。なんとか行きましょうって言ってバーステージに向かうとき、1回外に出たら雨が結構降ってたんすよ。そのとき、KOさんが俺の肩を持って言った言葉が『今日は、エガちゃんと初めて会ったときの事を思い出すよ』って。あれっ?これなんか今日は違うなって感じて見てたら、KOさん、ステージ上がって1発目のMCが『ぶち殺すぞー』やったんすよ。
一同:笑
江:若い子らはKOさんのその姿を見たことないんで、エーってなってましたもんね。
H:憧れもあるし尊敬もあるんだけど、やっぱあの重たさっていうのがある人達が出てくれた1日だから、自分たちがステージに上がるとき、ほんとにゲロ吐きそうなぐらい緊張するんだよね。
江:それで毎回、最後のハワイアンに繋がっていくんすね。凄いっすもん、最初から最後までダイブの嵐で。
H:まぁ最後まで見てくれてるヤツの意地ってのも、あるんだろうしね。こっちも気合い入りまくるし。あと毎年、若手チャレンジ枠ってのは用意しててね。先輩たちにどう見られるのかわからないけど、この世代のヤツらだって頑張ってるんだよ、って見てほしいところもあるし。それと必ずデカいステージの方に、バーステージの方で出てもらってるバンドから1個は出てもらってる。
江:今までならPALM、鐵槌、bachoですね。
H:ステージの大小が問題ではないんだけどさ。
江:でもアレはホンマに意図っていうのを色々感じるから、俺らはその感じた意気込みをどう返すかって思うんですけど。やっぱり大きいステージで鐵槌やPALMを見ると、ガチガチ上がるんっすよね。
H:この間、鐵槌がデカいステージでやったときにヌンチャクのクニが、鐵槌を高校から見てるけど、このデカいステージで見れる日が来るとはって言ってたもんね。俺は出てくださいってお願いに行くけど、やっぱこのデカいステージで見てみたいと思うもん。これは見て来た側の意地でもあるんだけどね。まぁ本当は全バンドをデカいステージで見てみたいんだけどさ。
江:今年も、甲子園(エコーズ)楽しみやなぁ。
H:俺たち自身もだけど、あの日が終わってまた次の365日が、次のエコーズに向けて何をやって、何を積み上げるのかが始まってるもんね。
江:俺ら、西へ帰る同期組は、帰りに足柄に寄って蕎麦を食うんですよ。そのときに、次の甲子園(エコーズ)はもう始まってるからな、って言ってるんですよ。来年もまたここで蕎麦を食える様に頑張ろうなって。PALMは毎年適当な理由をつけて、蕎麦食べるの不参加なんすけどね。
一同:笑
H:そういう意味でも楽しんでもらえると嬉しいよね。だけど年々、メロディックバンドが減ってるんだよね。
江:いま京都で定期的にバンドマンのミーティングみたいなのをしてるんすよ。京都ってバンドの数でいえば、大きいけど小さい街だと思うんです。そのミーティングの中にメロディックのバンドもいるんですけど、圧倒的にハードコアの方が数は多いんですよ。
H:俺たちの近いところでいえば一番若いのでDizzy Sunfistなんだけど、あそこから20代前半まで開いちゃう。その間のバンドは全然知らないんだよね。
江:その年代は、確かにパンクが弱いっすもんね。
H:でも歌モノであろうが何であろうが、根本にパンクがあるバンドは長続きしてるよね。
江:入り口がメロディック、ってヤツは多かったんですけどね。
H:まぁ、よくみんなで話すんだけど、日本でメロディックっていわゆる絶滅危惧種みたいな存在になったらなったで、それでもいいのかもって。それでも続けてるヤツが本物だろうし・・・数が少ないからとか、流行ってないからとかっていう理由で、続けられないんだったら辞めた方がいいよって思うし。
江:好きなら続ければいいし、言われてやるようなものでもないっすもんね。
H:昔の、音楽バブルのときってあったじゃん。あの音楽バブルを知ってるバンドも裏方の人でも、一部の人は音楽バブルの頭のままでいたりするわけじゃん。時代も変わってきてCDも売れません、ライブハウスだって苦しい、そういう時代になっているけど、大変さはあっても今のこの感じの方が、俺はある意味では本物感が出てきたって思う。
江:そうすね。ムーブメントで来てるヤツはもういない、ほんまに好きなヤツしか来てないってことですしね。一番リアルに楽しんでくれるヤツしか来てないですから。
H:あの当時は金儲けのツールで始める人も多かったしね。今あのときの音楽ビジネスマンみたいな人はほとんどいないし、だから風通しが良くなって本当に好きなヤツしかいなくて、純粋なものができるって思うんだよね。
江:だから今残ってるバンドは、純度の高いバンドばっかりなんですよね。あのときってまがいモノが流れに乗っかってるだけで、ムーブメントが終わったらスグにやめるようなヤツばっかでしたもんね。
H:振り返ってみたら、10何年前の打ち上げで揉めたのって、そういうヤツらばっかだったような気がする。
江:本質的に、流れでやってるヤツらと本気でやってるヤツとの温度差があったからですよね。フワッとしたメロディックや、フワッとしたミクスチャーのバンドはもう全滅してますもん。
H:まぁジャンルとかはあまり関係ないけど、当時の口先ばっかで違和感を感じた人たちは今はもう周りにはいないし。
江:何バンドかは辞める後押ししましたもんね。どうせお前ら消えるから、思い出の1つでパンクバンドに潰された、の方がええやろーいうて。
一同:笑
江:それでも押し切ったヤツは今でも残ってますし、そいつらは今でもツルみますしね。
H:俺たちなんて、その当時デモテープ持って行っただけで出禁になった箱あるもんね。売れないから来ないでくれって。
江:俺らも、京都のライブハウスは全滅やったし。
H:マジで!?
江:2年間、滋賀と大阪でしかライブできなかった時期があるんすよ。
H:それは、素行が悪かったからじゃないの?
一同:笑
H:まぁそれも、自分たちのガソリンになったんじゃないのかなと思うけどさ。
江:その当時、大阪ではベイサイドジェニーがあって売れてるヤツは全員そっち、ほんで俺らは梅田の40人ぐらいしか入らへんギルドってライブハウスでやってたんすよ。そこはそこで出てるヤツと仲良くやればいいのに、ガンガンぶつかってましたけど。
H:あの当時さぁ、俺らも暗いメロコアは流行んないから辞めろとか、曲変えろって、しょっちゅう言われたもんね。けどある日突然、こういうバンドいないよねって言われ始めたんだよ。まぁ今も昔も、明るかろうが暗かろうが、やりたいことやればいいって俺は思ってるけどね。
江:オリジナリティーを追求するときって、そうなるかもしれないですね。俺らもいっそわかりやすいハードコアをやってたら、もうちょっと楽やったかもしれないですし・・・初期の頃から今の原型みたいなんをやってたんで、色んなところから扱いづらいって言われました。
H:周りに言われすぎて気にならなくなったもんね。いいとか悪いとか。それでやりたいことをやろうと思ったときにSTOMPIN’ BIRDってバンドが横浜にいて、何やらブッキングのライブを月10本ぐらいやっていると。会ったことないけど負けたくないからって、ブッキングを月15本ぐらいやったのよ。ノルマの払い過ぎで、借金しすぎて首回らなくなったけどね(笑)そんなときにストンピンと出会って、ソールドアウトって言葉を初めて聞いて、すげえバンドだなって思ったよ。でもストンピンはそんな活動をしながらも、横浜のハードコアやパンクの人たちともイベントをやってたのね。それを見たときに、俺たちももっとこういう活動をやるべきだと思ったのよ。